NFR98 検討研究会 ニュースレター No. 2

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                 NFR98検討研究会 ニュースレター  No.2
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                        発行日 : 2002年4月10日
                        編集:西野理子(東洋大学社会学部)
 
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目次
  1.第2回研究会報告
  2.第1報告(松田茂樹会員)要旨
  3.第2報告(西村純子会員)要旨
  4.第3報告(末盛慶会員)要旨
  5.事務局からのお知らせ
  6.次回研究会のお知らせ
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第2回研究会報告
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2002年3月29日(金)午後1時より、慶應義塾大学三田キャンパスにおいて第2回研究
会が開催されました。
出席者は以下の24名の方々です(敬称略):
石原邦雄(東京都立大)、稲葉昭英(東京都立大)、井上清美(お茶の水女子大)、
太田美緒(東京大)、大友由紀子(十文字女子大)、加藤彰彦(帝京大)、
神原文子(相愛大)、菊澤佐江子(淑徳大)、木下栄二(桃山学院大)、
末盛慶(東京都立大)、仙田幸子(獨協大)、園井ゆり(九州大)、
田中慶子(東京都立大)、田中重人(東北大)、永井暁子(家計経済研究所)、
中西泰子(東京都立大)、西野理子(東洋大)、西村純子(慶応義塾大)、
西村昌紀(ダイヤ高齢社会財団)、平尾桂子(上智大)、
松田茂樹(ライフデザイン研究所)、大和礼子(関西大)、
吉原千賀(奈良女子大)、渡辺秀樹(慶応大)
 
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第1報告要旨
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「NFR98質問項目についての検討資料:家族意識項目(規範意識)、配偶者との同伴
行動」松田茂樹(ライフデザイン研究所)
 
本報告は、次の2点を目的として実施した:@NFR98の既存質問の有効性を検証し、そ
れらがNFR03に残すべき質問かどうかを判断する材料を提供する、ANFR98にはない
が、NFR03で新規に入れた方がよい質問を考える際の判断材料を提供する。NFR論文集
サーベイ、他の先行研究サーベイ、NFR98データの基本集計分析を行い、上記の点を
検討した。各質問の検討は、NFR論文集での成果、質問の妥当性、先行研究の動向を
総合して行った。
報告者からは、NFR03の質問作成に向けて、次の点が主な論点になることを提示し
た。
 
1.家族意識項目(規範意識、問20)
NFR98では、規範意識を6個の質問で尋ねている。内容は、(ア)性別役割分業、
(イ)愛なし夫婦の離婚、(ウ)未婚での性関係、(エ)子どもへの献身、(オ)長
男の親扶養責任、(カ)老親同居責任、である。各質問が1つの規範を表すように設
計されている。
規範意識については、NFR03の質問作成に向けて、次の点が主な論点になると考えら
れる。
論点1:質問で取り上げる規範意識の概念(次元)を増やすかどうか。家族意識に関
する主な先行研究は、大きく分けて、@家意識、A性別役割分業意識(a.性による
役割振り分け、b.愛による再生産役割)、B家族形態の多様化を許容する意識、の3
分野4項目に整理できる。総合的な家族調査を目指すのであれば、これらをある程度
網羅的に捉えることが求められるとみられる。ただし、優先順位は必要であり、より
多くの重要な仮説を検証することができる概念を優先的に入れる必要はある。
論点2:概念を適切に測定するために、1概念1質問ではなく、1概念多質問で尋ねて合
成指標を作る方法を模索する方が望ましい。先行研究をみると、1つの合成指標をつ
くるために最低限3~4質問以上は確保されている。調査票スペースの調整が必要にな
る。
論点3:NFR98既存質問の取捨選択。調査の連続性のためには可能な限りNFR98質問を
残すかたちで、質問の改変を行うことが望ましい。ただし、妥当性等に問題があった
り、仮説の検証等に不向きな質問については、取捨することも考えられる(問20イ、
エ)
 
2.配偶者との同伴行動(問16付問14)
NFR98では、夫婦同伴行動について、「(ア)いっしょに夕飯をとること」「(イ)
いっしょに買い物やショッピングに行くこと」の2項目を尋ねている。
NFR03の質問作成に向けて、次の点が主な論点になると考えられる。
論点1:測定する同伴行動の種類を増やすか否か。NFR98では「夕食」と「買い物・
ショッピング」の頻度しか尋ねていない(「夕食」は同伴行動とは厳密には異なるた
め、実質的には1項目である)。同伴行動が多い夫婦/少ない夫婦ということを捉え
るためには、「買い物・ショッピング」に加えて、「趣味(スポーツ、映画等)」
「行楽・旅行・ドライブ」を一緒に行う頻度についても尋ねる方法が考えられる。こ
れら3項目(「夕食」を除く)で、夫婦の伴侶性(同伴行動が多い夫婦か否か)を捉
える合成尺度を作成することも可能となる。
論点2:「夕食」と夫婦同伴行動項目との別質問化ないしは「夕食」質問の廃止。夫
婦同伴行動という観点からみると、「夕食」は概念が異なる。また、ほとんどの者が
夕食を夫婦一緒に食べており、回答にばらつきが少ない。さらに、論点4に示すよう
に、「夕食」とその他の行動の頻度を一緒の質問で聞く方法では、選択肢(頻度)が
細かくなりすぎる(下記質問案では、夕食とその他行動を一緒に聞く形式にしている
が、この形式は回答しづらい)。
論点3:夫婦の共同性/個別性を測るために、「夫婦単位で友人等と会う」というよ
うな社交的な項目を測定するかどうか。
論点4:頻度の尋ね方。同伴行動は絶対的な頻度が低いため、客観的に測定する場合
には、頻度が低いところを細かく尋ねる工夫が求められる。
 
3.検討会での意見
上記報告に関して、検討会では次のような意見が交わされた。
(1)伝統的家意識、近代家族意識が、どの程度人々に受け入れられているかをしっ
かりと捉える必要がある。報告資料で提示された3分野4項目の質問案は、現在の家族
研究で重点的に扱われている規範に対応している。これをひとつのたたき台として
NFR03の質問の方向性を考えてはどうか。なおその際には、何のために規範意識を測
定して、どのようにして研究に活かすかを十分考える必要がある。
(2)個別の項目についてみると、家意識は、薄れつつあるとはいえ、NFR03でも測
定し研究する意義がある。例えば、「先祖祭祀」の意識などは含めた方がよい。また
現在は、中期親子関係に関する規範意識がないが、現在の家族研究の動向やニーズを
考えるとそれに該当する規範意識も測定することも考えられる。
(3)夫婦同伴行動の質問は、米国スタイルの伴侶性が、わが国家族へどの程度浸透
したかを捉えるためのものである。NFR03でも、これを測定する意義は高い。具体的
な質問項目として、現在は「夕食」「買い物」があげられているが、夕食は伴侶性で
はない。伴侶性を捉えるのであれば、それに合った項目に重点を置いて聞いた方がよ
い。
 
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第2報告要旨
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「NFR98質問項目の検討:役割ストレーン、夫婦間サポート・勢力関係」西村純子
(慶應義塾大学大学院)
 
本報告では、役割ストレーン、夫婦間サポート・勢力関係についてのNFR98の質問項
目の妥当性の検討をおこなった。
 
1 役割ストレーン
役割ストレーンは、ストレス研究においてストレッサーの一形態として位置づけられ
る。先行研究における役割ストレーンの測定とNFR98を照らし合わせてみると、NFR98
は、注目すべき役割の領域(家族-親役割、配偶者役割、子役割)、主な役割スト
レーンのタイプ(役割過重、役割内での対人間葛藤)ともにほぼカバーしており、内
容的妥当性が確保されているといえる。
分析結果をみると、分布は右にゆがむ傾向があるが、質問項目の内的整合性は高く、
基準関連妥当性も確保されている。またNFR98報告書では、役割ストレーンに対する
性別の効果、家族ストレーンへの女性の就業の限定的な効果、家族ストレーンへの配
偶者の情緒的サポートの効果など、先行研究と整合的な知見が得られている。
以上から、NFR98の質問項目は、役割ストレーンの測定項目としてほぼ妥当性を確保
できていると考えられる。
 
2 勢力関係
夫婦間の勢力関係の研究は、相互作用論的視点から家族の内部過程を明らかにしよう
とする立場からの研究の一領域である。1970年代はじめ頃まで盛んであり、資源説の
検討を中心に展開されてきた。しかし以後、勢力関係研究に対しては、資源の不平等
配分を社会構造から説明する視点が弱いことや勢力関係を意思決定の結果に注目して
把握することなどへの批判が投げかけられている。
NFR98の質問項目の分布をみてみると、男性、女性とも特に若年層に「どちらともい
えない」に回答が集まる傾向がみられる。
またNFR98報告書では、この項目は分析にほとんど用いられていない。夫婦間の力関
係は注目すべき重要な問題であると思われる。しかし勢力関係についての理論的動
向、質問項目の内容的妥当性(意志決定の結果で勢力が十分に把握できているかとい
う問題)、学会内での研究動向(質問項目があまり用いられていない点)などを考慮
すると、勢力関係についてのNFR98の質問項目を継続的に用いていくかについては、
今後議論が必要であると思われる。
 
3 夫婦間サポート
内容的妥当性、基準関連妥当性に関しては、NFR98報告書の稲葉昭英論文においてす
でに検討されており、一定の妥当性が確認されている。
NFR98報告書からは、性別の規定力、結婚年数/ライフステージによる U字型カー
ブ、職業に関する変数との関連、あるいは独立変数としても役割ストレーンに対して
一定に説明力をもつことが確認されており、先行研究の知見と整合的な結果が得られ
ている。
これらより、NFR98の質問項目は、配偶者からのサポートを測定する項目として妥当
性を確保できていると考えられる。
 
こうした報告にたいして、以下のような議論がなされた。
役割ストレーンについて
・役割ストレーンのタイプとして、NFR98では役割過重・対人間葛藤に対応する項目
がとりあげられているが、役割間葛藤に関する質問項目を入れてもいいのではない
か。
・「家族内の負担感」の多義性をどのように考えるか。男性でも女性でも、より広い
年齢層の人に答えられる質問にしていくかどうかでも方向性が変わってくる。
・分布の偏りについては、分析方法で工夫していくのが望ましいのではないか。
 
勢力関係について
・独立変数として使用される可能性があるなら、入れておいてもよいかもしれない。
・「パワー」をどうとらえるかが問題なのではないか。
 
夫婦間サポートについて
・取り上げられている質問は情緒的サポートだが、手段的サポートに関する質問を加
えてはどうか。→男女で同じ尋ね方をするのが難しいという問題もある。
 
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  4.第3報告要旨
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「NFR98質問項目の検討:子どもとの同伴行動、親子関係項目」末盛慶(東京都立大
学大学院)
 
本報告では、NFR98における子どもとの同伴行動および親子関係に関する質問項目の
妥当性を検討した。具体的には、@NFR論文集における使用状況および分析結果、A
各質問項目の度数分布、B質問の妥当性の検討を行った。検討の結果、@前期親子関
係を検討する論文において、子どもとの同伴行動(あるいは会話の頻度や子どもの関
係良好性)を用いる研究が多いこと、A子どもとの同伴行動、会話の頻度、関係良好
性の分布には偏りがみられること、B子どもとの関係良好性に関しては、子どもの出
生順による違いが全くみられないこと、が明らかにされた。また家族に関連する
NFR98以外の全国調査(公開データ)との比較から、子どもとの同伴行動と子どもと
の会話の頻度を聞いているのはNFR98のみであることも報告された。親子関係に関し
ては、やや質問項目が手薄であることに触れ、新規項目としては、@育児遂行に関す
る項目、Aしつけや教育に関する項目、B子どもの状態(例.学業成績や問題行動な
ど)を把握する項目の必要性が案として出された。特に、子どもの状態を把握する質
問項目の重要性に関しては、参加者からも肯定的な意見が出された。また、質問項目
とは異なる論点として、若年層のケースが少ないことも課題として指摘された。
 
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 5.事務局からのお知らせ
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1.ご希望の方に、第2回研究会の報告で用いられたレジュメを、添付ファイルにて
お送りすることができます。
松田氏報告資料(45.5KB)
西村氏報告資料(49.0KB)
末盛氏報告資料(330KB)
ご希望の方は、「第2回研究会の報告資料を希望」と明記の上、下記までメールにて
お申し込みください。
mnishino@soc.toyo.ac.jp (98検討研究会世話人 西野理子・東洋大学)
なお、松田氏と西村氏の報告では、別途資料が用紙されておりましたが、その資料
は、添付ファイルではお送りできません。
 
2.ご所属の変更
以下の2名の方のご所属およびアドレスが4月より変更になりました。お手元の名簿
を修正してください。
なお、他にもご所属やアドレスを変更された方がいらっしゃいましたら、西野:
mnishino@soc.toyo.ac.jp までご連絡ください。
 
神原文子 神戸学院大学 fumikokam@ams.odn.ne.jp
西村純子 明星大学 (アドレス変更なし)
 
3.研究会配布資料のコピー代がNFRの経費でまかなわれることになりました。
 本研究会のコピー代をNFR費用から捻出することが、先日開催されたNFR委員会の場
で了承されました。なにぶんにも本研究会は自発的な組織で、資金の後ろ盾がありま
せん。旅費も自己負担となっております。しかしながら、NFRの向上のための活動の
一環であるということで、せめてコピー代だけはNFR経費から出すことになりまし
た。第2回研究会より実施されています。
 コピー代の立替方法および領収書についての注意事項などは、別途、報告者の方に
お伝えしていきます。文部科学省の科学研究費が採択されるまでは、この資金体制で
のぞむことになります。
 
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6.次回(第3回)研究会のお知らせ
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  以下のように開催が決まりました。
 
 日時:4月27日(土) 午後1:00~5:00
 場所:慶應義塾大学三田キャンパス1号館132教室
  *前回と教室が異なります。前回と同じ建物の3階になります。
   交通:JR山の手線田町駅下車または都営三田線三田駅下車
     大学までの経路: http://www.mita.keio.ac.jp/access-j.html
 
     大学構内地図: http://www.mita.keio.ac.jp/map-j.html
 
  報告:田中慶子(東京都立大学大学院)
     保田時男(大阪大学大学院)
     加藤彰彦(帝京大学)
 
報告内容については、再度アナウンスがあります。保田・田中氏には中期親子関係を
中心とする項目の検討をお願いしています。また、加藤氏からは現在実査が終了した
ばかりのNFR・S01調査についての紹介があります。
 
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Created: 2002-04-10. Updated: 2012-04-30.

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