NFR98 検討研究会 ニュースレター No. 1

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                 NFR98検討研究会 ニュースレター  No.1
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                        発行日 : 2002年3月3日
                        編集:西野理子(東洋大学社会学部)
 
 
 1.第1回研究会報告
 2.第1回研究会 第1報告要旨
 3.第1回研究会 第2報告要旨
 4.第1回研究会での議論から
 5.名簿の修正
 6.次回研究会のお知らせ
 
 
 1. 第1回研究会報告
 
 2002年2月23日(土)午後1時より、東洋大学白山キャンパスにおいて第1回研究
会が開催されました。
 出席者は以下の27名の方々です(敬称略):
 石原邦雄(東京都立大)、稲葉昭英(東京都立大)、井上清美(お茶の水女子大)、
 大久保孝治(早稲田大)、太田美緒(東京大)、大友由紀子(十文字女子大)、
 加藤彰彦(帝京大)、神原文子(相愛大)、澤口恵一(大正大)、
 嶋崎尚子(早稲田大)、末盛慶(東京都立大)、仙田幸子(獨協大)、
 園井ゆり(九州大)、田中慶子(東京都立大)、田中重人(東北大)、
 永井暁子(家計経済研究所)、西野理子(東洋大)、西村純子(慶応義塾大)、
 西村昌紀(ダイヤ高齢社会財団)、野沢慎司(明治学院大)、平尾桂子(上智大)、
 福田亘孝(国立社会保障・人口問題研)、藤見純子(大正大)、
 松田茂樹(ライフデザイン研究所)、保田時男(大阪大)、
 吉原千賀(奈良女子大)、渡辺秀樹(慶応大)。
 当日は、開催場所がわかりにくく、たいへんご迷惑をおかけしました。おわび申し
 上げます。
 
 2.第1回研究会 第1報告要旨
 NFR98からみた、親・子・きょうだいとの関係:社会保障・人口問題基本調査と
 の比較より(西野理子・東洋大学)
 
 親・子・きょうだい関係に着目し、NFRと同じように全国規模で実施された確立標
 本調査である社会保障・人口問題基本調査(第2回家庭動向調査、第4回世帯動態調
 査)との比較を通じて、NFR98のデータ特性の理解を深めることを目指した。あ
 わせて、標本を女性に限定したデータ(家庭動向調査)との相違、および、標本抽出
 単位を世帯としたデータ(世帯動態調査)との相違も考察に含めることを、報告の目
 的とした。
 まず、NFR98における親・子・きょうだいとの関係項目を確認し、報告書におい
 て親・子・きょうだいとの関係がどれほど扱われているかを概観した。
 第2に、第2回家庭動向調査を取り上げ、(1)デザイン、(2)年齢別標本数を比
 較した。ついで、比較可能な標本に限定し、(3)両親の生存割合、(4)親との同
 居率、(5)別居の母と話す頻度、(6)別居の義母と話す頻度、を比較した結果を
 提示した。第2回家庭動向調査は、NFR98の半年前に有配偶女子を対象に実施さ
 れたものだが、結果を比較すると、NFRとの差はそれほど大きくはなかった。ただ
 し、家庭動向調査に比べてNFRは、親との同居率が一貫して高く、都市居住者が少
 ないことの影響が伺えた。また、「話す頻度」を比較した結果からは、質問文の相違
 の影響が読みとれ、尺度の意味の共有について問題点が提示された。また、家庭動向
 調査は女子のみの回答であるが、NFRの男女の回答をみると、同居など事実に関し
 ては、男性の回答と女性の回答にそれほど開きはみられなかった。
 第3に、第4回世帯動態調査をとりあげ、(1)デザイン、(2)年齢別標本数を比
 較した。ついで、比較可能な標本に限定し、(3)親の生存数別割合と、(4)子ど
 ものいる者の占める割合、(5)同居子のいる者の占める割合、(6)平均きょうだ
 い数、を比較した結果を提示した。第4回世帯動態調査は、NFR98の半年後に世
 帯単位で抽出して実施されたもので、総世帯員を標本とした分析結果の一部は、NF
 R98と比較することが可能であった。比較の結果、両調査の差はそれほど大きくは
 なかったが、NFR98の方が高齢の対象者の占める比率が高かった。若年で子ども
 のいる者も多く、有配偶者が多く初婚年齢が低いというNFR98データの特性が確
 認された。また、高齢にあたる出生コーホートで、NFR98の方がきょうだい数が
 多かった。出生については、NFR98データの代表性についての検討がまだそれほ
 どされておらず、課題として提示された。世帯抽出で世帯員総数を捉える方法と、N
 FRのように個人抽出で捉える方法との、標本抽出による違いは、今回の結果からは
 とくに確認することはできなかった。
 NFRのデザイン自体を変更する可能性が低いにもかかわらず、話題が調査デザイン
 やサンプリング方法にまで広がったので、不審に思われたかもしれない。幅広く検討
 していく一助にと思っての報告であったが、標本調査同士を比較するには、まだまだ
 課題は多い。
 
 **当日の資料の残部をご希望の方には、次回研究会時にお渡しできます**
 
 
 3.第1回研究会 第2報告要旨
 
 NFRデータのいくつかの問題:報告書論文から(稲葉昭英・東京都立大学)
 
 報告内容は(1)NFR98データの分析法のメタ分析、(2)NFR98のいくつかの項目の構成概
 念妥当性に関する情報、(3)職業項目をSSM調査の結果と比較し、自記式-面接法の差
 異について検討、という3つの問題を扱った.
 (1)はNFR98調査報告書に収録されている論文を対象に、分析法についての問題点と傾
 向を論じたものである。まずNFRデータは公開データであり、分析者はその結果に責
 任を持つべきであるという自明の指摘から始まり、論文は再現可能な形で、かつ常に
 自分の部分析結果に批判的であるべきだという原則が高らかに語られた。ついで NFR
 データは幅広い年齢層を含んでいるにもかかわらず、年齢による差異に留意しない主
 効果モデルが多く用いられていることの危険性が指摘され、まず分析は年齢によるパ
 ターンの差異に注目すること、あるいは特定の年齢の対象者に限定して行うべきであ
 ることが提案された。
 ついでこうした年齢による差異について、報告書論文は大きく分けてこれをコーホー
 トの差異に還元する説明と、発達的な変化の差異(相対的に安定的な社会構造上の差
 異)に還元する説明の二つに分かれることを指摘した。この立場は調査票上の変数の
 差異にも対応する。調査票上の変数を、生涯で一度しか経験しない移行的イベント
 (transitional event)変数と、生涯のさまざまな時点で経験・変化する意識・態度
 ・行動変数に区分すると、前者はコーホート還元論的な立場に、後者は社会構造還元
 論的な立場に対応しやすい。さらに、後者の意識・態度・行動変数を相対的に広範囲
 のステージで経験される通ステージ変数と、限定されたステージで経験される特殊ス
 テージ的変数に区分することができる。移行的イベント変数と、通ステージ的変数は
 それぞれ対象者の経験率が高いが、特殊ステージ的変数はステージが限定されている
 ために経験率が低くなり、項目の優先性が低くなる。移行的イベント変数に関心を持
 つ研究者は広い年齢層(コーホート)からデータを取ることを希望するし、通ステー
 ジ的変数に関心をもつ研究者はある程度限定された範囲で年齢別人口を厚くしたデー
 タを取ることを希望する.
 結局、NFR98データは移行的イベント変数と通ステージ的な意識・態度・行動変数が
 主要部分を占める形になっていて、特殊ステージ的な変数(育児、特定段階の親子関
 係など)が極めて少ないという構造をもっている。NFR03にむけて、この特殊ステー
 ジ的項目をどう扱うかが議論される必要がある.具体的にはオーバーサンプリングを
 おこなうとか、モジュール的に、その時々の重点領域を基本項目とは別に盛り込む形
 にするか、といった工夫が必要と思われる.
 また、データの分析という側面からは、移行的イベント変数はリジッドな変数であり
 扱いやすい側面があるが、通ステージ的変数は扱いが難しく、とくに特定の年齢区分
 と対応した変数が「年齢」変数以上に規定力を持ってしまうことがあるので、この点
 に留意した解釈と慎重さが必要である。
 (2)の構成概念妥当性については、報告書論文を読む限りでは個人的ネットワーク項
 目、親族間の援助関係、CESDなどの項目は比較的妥当性が高い結果が得られているこ
 と,一方認知された家族、性別役割分業意識については妥当性の検討が今後とも必要
 であることが述べられた。
 (3)のSSM95調査との比較では,回答者の出生コーホートをそろえた上で本人の初職に
 ついてまず考察を行った。職種についてはSSMで女性の事務が多くなること、これに
 対してNFRでは販売・サービスが多くなること、従業先規模は男女ともNFRでは10-99
 人がSSMよりも多く、SSMは1000人以上が多くなること,これに比して従業上の地位に
 関する情報は2つのデータ間でそれほど差異がないことが示された。父代表職につい
 てはSSMは「主な職業」、NFRでは「15歳時の父の職業」と差異があるせいか、経営・
 役員はSSMに、常雇はNFRに多い。また、一貫してSSMに非農自営が高い顕著な傾向が
 示された。これも最終的な到達職と、その経過点での職業を問う差から来ているのか
 もしれないし、回答者がどの範囲を「自営」と見ているかという差異に起因している
 可能性もある。いずれにせよ、出身階層として到達職を聞くのが妥当なのか、15歳時
 の父職を聞くのが妥当なのかは、SSM関係者の意見も聞いてみたいところである.
 本人現職についてはNFRはSSMよりも4年ほど調査時期がずれるため、出生コーホート
 で比較すると高齢者で無職がNFRに多くなる。また、若年女性の無職はSSMに高く、臨
 時雇はNFRで高いと、従業上の地位の差が示されてしまっている.また、高齢男性で
 技能がSSMに高く、販売がNFRに高いという差異も示された.こうした差異は、自記式
 (NFR)と面接(SSM)の差を大きく反映している可能性がある。
 基本的には本人の従業上の地位に関しては比較的SSMとの差は少ないが、父職には無
 視できない差が示された。自記式で問う職業情報をどの程度までにしておくか、今後
 検討が必要と思われる.
 最後に、パワーポイントの設定に手間取って報告が遅れたこと、パワーポイントのプ
 レゼンに対応したレジュメを作らなかったことに対して会終了後ブーイングがおきま
 した.ごめんなさい!
 
 **当日の資料の残部をご希望の方には、次回研究会時にお渡しできます**
 
 
 4.第1回研究会での議論から
 
 第1回の研究会で、NFRデータや本研究会のあり方などについて議論がなされました。
 この議論をもとに、世話人は以下のように考えています。
 
 (1) 本研究会はNFR03実施のために、NFR98データの再検討を行う研究会である。
 したがって、まずはNFR98調査票の項目の信頼性・妥当性の検討、修正案の提示を基
 軸として作業を進める。
 ただし、調査デザインや標本抽出法などの議論ももちろん妨げない。
 
 (2)各回の報告は、
 (1)報告者が主として関心を持つ項目に関して、報告書論文のいくつかを取り上げ
 て、報告書論文を書評しつつ項目の妥当性や信頼性について議論する、
 (2)自分の分析結果をもとに項目の信頼性や妥当性について議論する、
 のどちらかを原則とするが、これ以外の方法でもNFRデータに関連していれば歓迎す
 る。
 
 (3)今後の課題とスケジュールを明確にすべきだという意見も出されました。
 これについて世話人は調査票全体をいくつかの領域に区分し、それぞれの領域に関す
る項目情報のとりまとめを何人かの方に依頼しています。今後は、この分担者による
報告を毎回の報告の基本とします。もちろん、毎回の報告はこれのみではなく、随時
自主的な報告を歓迎いたしますので、報告を希望される方は世話人までご連絡くださ
い。
なお、スケジュールはある程度決まり次第、随時ML上で周知を行うことにします。
 
 (4)本研究会の成果を日本家族社会学会に還元する必要があるため、
次期日本家族社会学会大会でテーマセッションを申し込みました(「NFR98からの提
言」)。本研究会メンバーから報告者を募集することになります。
世話人としては、若い研究者の方々にこうした発表の場をぜひとも活用していただき
たいと考えています。
自薦・他薦を問わず、報告者を募集しますので、世話人までご連絡ください。
 
5.名簿の修正
 研究会の場でお配りした名簿に、以下の誤りがありました。修正しておいていただけ
ますよう、お願いします。
 
 追加: 西村昌紀・ダイヤ高齢社会研究財団・アドレス
(HQB00745@nifty.ne.jp)
 追加:福田亘孝・国立社会保障・人口問題研究所・アドレス
(n-fukuda@ipss.go.jp)
 所属間違い:熊谷文枝・杏林大学
 
 6.次回(第2回)研究会のお知らせ
 以下のように開催が決まりました.
 
 日時:2002年3月29日(金)午後1時から5時まで
 会場:慶應義塾大学三田キャンパス1号館106教室(南門をはいってすぐの建物)
 交通:JR山の手線田町駅下車または都営三田線三田駅下車
    大学までの経路: http://www.mita.keio.ac.jp/access-j.html
 
    大学構内地図: http://www.mita.keio.ac.jp/map-j.html
  報告:松田茂樹(ライフデザイン研究所・慶應義塾大学大学院)
     末盛 慶(東京都立大学大学院)
     西村純子(慶應義塾大学大学院)
 
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